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忘れもの

私はしょっちゅう忘れものをする。
昨日、お客さんの所に原稿を受け取りに行ったはずが、雑談してるうちに肝心な原稿を忘れて帰ってしまった。家に戻ってからお客さんから電話かかってきたのだけど、もう怒るというよりあきれて笑ってくれた。

私は子供の頃から忘れものが絶えなかった。通信簿の先生からのメッセージ欄は、いつも決まって「忘れものに注意すること」。教室の中で私は「忘れものの王様」と呼ばれていた。私が給食の集金袋とかを、たまに忘れずに持ってきたりすると、クラス中がどよめいたりしたものだった。
ずっとその性分は変わっていない。電車の網棚には書類を忘れる。食事するお店では手帳を忘れる。公衆電話を使えば、財布を忘れる。居酒屋で飲んでいれば眼鏡を忘れる。時計を忘れる。旅先では鞄を忘れる。上着を忘れる。帽子を忘れる。ちょっと病的なくらいに、あちこちにいろんなものを忘れてしまう。そのくせに、お客さんの電話番号をたくさんそらんじていたり、暗記ものは得意だったりもするのだけど。

昨日はお客さんが「横山さんって大物ですね」って笑ってくれたけど、この先いつもっと取り返しのつかない失敗もしでかすやらわからない。でもこれは私の持って生まれた性分なんだから、もうどうしようもない。私の周りの人たちには、「しょうがない」と思って、寛容につきあってもらえたらとお願いするばかりだ。
私が何かとても大事なことを忘れているとしても、そういうわけで、悪気はないのですよ。本当に。