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飛びこむ勇気

花を見て、美しいから好きと思うのと、花を育てるのが好きということとは、必ずしも重ならない。子犬を見て可愛いと思うのと、実際にその子犬と暮らすことの大変さを実感するのには距離がある。人一倍食べることが好きで美味しいものが大好きという人が、料理人や料理研究家になれるわけじゃない。絵が描くのが好きだからといって、絵を描くことを職業にしたら思いもよらぬ違和感を抱くようになる。

何のことであれ、自分の好きなことと、そこに自分の人生を重ねる行為は別なことで、その見極めはつくづく難しいと思う。単に好きだからとその対象に近づき過ぎると、かえって熱意を失ってしまったり、苦しい思いをしたり、知りたくないことを知って幻滅してしまったり…。そしていつのまにか、自分が大事に思っていた対象を見失ってしまうことだってあるかもしれない。そういうこと全部を乗り越えて、更にその対象に近づいていけるのか、それともどこかで線引きをしてしまうのか・・・・?

「昔みたいに、とにかくアニメーションが本当に好きでまず最初の就職としてね、これで実際食っていけるかどうかわからなくてもやってしまえと、崖から飛びこんでもこの世界に入ってくるという強烈な意志みたいなものが、今の新しい人たちには見えないですよね。その辺がなんかさびしいですね」
----坂口 尚(1980年『ぱふ』手塚治虫との座談会から)

これは、私が心から尊敬する漫画家・坂口 尚さんの言葉。その座談会の記録が掲載された雑誌を、私が手に取ったのは高校生の頃。それ以来ずっと、心の奥にこの言葉が残って、その後の自分の人生の選択に大きな影響を与えた。何かしら判断が難しく思えた時も、坂口さんのその言葉が自分を後押ししてくれた。単純すぎると笑われるかもしれないけれど、私にとってはそれぐらいに重みのある言葉、自分を勇気づけてくれる言葉だった。

好きなことには後先考えずに飛び込んでで行ける勇気を持ち続けたい。たとえ何を失うことになったとしても。・・・・なぁんて、格好つけてみたって、実際はいさぎよく「崖から飛び込む」ことができなくて、いつも足元ばかり気にしながら道を探っている自分がいる・・・のだけど。